2010年3月31日水曜日

「中小製造業」X「マイクロモノづくり」X「BOP」戦略会議始まる

先日BOPのシンポジュウムで知り合いになった、東大博士課程のメンバーと日本のインターンという仕組みを創出した立役者のEITCのメンバーと初会合を行った。

博士課程の学生とはいっても、メンバーの出身は様々で、もと外資系コンサルティング出身、日本のシンクタンク出身、ETICの方も日本の大手メーカー出身などで、実務能力も高く、ばりばり仕事をこなす油が乗り切っている30代のメンバーたちばかりである。

会合の内容は、BOP(Base of the Pyramid:世界の残りの40億人)マーケットに対して、日本の中小製造業がもっているモノづくりの技術を生かした製品を、広めていくための方法としてどのような企画があり得るのかということだった。

ご承知のように、日本の製造業は非常に厳しい状態におかれている。

大手の製造業であれば、海外に工場を建て、現地の従業員を雇うことで、この円高はなんとか回避できる。

しかし体力のない中小企業に、いきなり海外へ行けといっても、それはハードルが高い上に、日本での雇用が確保出来ない。

日本の会社の99%を占める日本の中小製造業がすべて海外へ工場をシフトしたとなると、そこで失われる雇用機会の数を考えただけでもゾッとする。企業・住民税は下がりつづけ、失業者があふれ、町は荒廃するだろう。

メンバーディスカッションをしていく中で、各メンバーとも現状の日本の産業のおかれた環境に非常に危機感を感じていることがわかり、そこの部分では大いに共感した。

しかし、今回集まったメンバーは、実際にものをつくる主役の中小製造業の方々ではなく、あくまでも応援団や観客なのである。メンバーの中に主役の製造業の方がいない。そこで、このBOPに中小企業のマーケットがあるということを、製造業の方々にわかってもらうために、製造業とのネットワークの構築をを当社が提供するということになった。

日本の中小製造業の多くの方は、「BOP」という言葉さえ聞いたことが無い方がほとんどだろうと思われる。BOP世界の人口60億人のなかで世界経済の恩恵に浴している20億人の外にある、のこり40億人の市場のことである。

いま、日本の中小企業は全盛期のように、大手メーカーからの発注を期待して、雇用調整金を活用しながら従業員を確保し、なんとか経営を続けているところが多い。しかし、ここまで円高が進み、中国などに量産の生産工場が移転した段階では、それはもはや難しいといわざるをえない。

中小企業が自ら製品を作り出し、それを残りの40億人の市場に提供することも、日本の中小製造業が生き残る道ひとつの道だと考えられる。

今回の企画では、海外のNGOにネットワークを持つ企業と連携をして、日本国内の製造業や個人の方からBOP市場むけの貧困国で生活向上に役立ちそうな製品の企画・設計・デザインなどをWEB上で募集し、その製品のプロトタイプを実際にアジア・アフリカなどの貧困国の現場に持ち込み、現地の方に評価してもらう。

現地のニーズにマッチしていることが十分に確認され、その製品の評価が高ければ、インターネットによる寄付をつのり、その寄付が一定上の金額が達した段階で、中小企業側に発注をかけ、中量産し、現地のNGOを通じて製品を貧困国へ配布するというものである。

中小企業側には新たなマーケットが開拓出来き、貧困国の現地の方々は、その製品を使って、生活の質が上がる。またNGOにとっては、彼らの実績ということになり、企業や政府からの寄付を募りやすくなるというものである。

今回は1回目のMTGということで、具体的なプランなど、まだまだ詰めなければならないことは数多くあるが、今回集まったメンバーの共通の意見で、「1つでも成功事例をつくりあげ、BOPが中小製造業にとってマーケットになる事を気がついてもらう。」ということがもっとも重要だと。

今後、定期的にMTGを行い、会合の模様などをリアルタイムでBLOGやTwitterでアップしていきたいと考えている、その上で、今回の企画にご賛同いただけるかたのご意見を参考にしたり、実際に本企画にご協力いただけそうな中小製造業の経営者の方々に広く呼びかけていきたいと考えている。

我々に残されている時間は長くはない。今、ここで日本産業界が大手企業主体による輸出依存型の産業からマイクロモノづくりへ舵をきらないと大変なことになるとひしひしと感じている。

この試みを成功させ、BOPに対して、日本の中小企業がもっている技術で貢献し、その上で、経済的にも成果が得られるような仕組みを作りたい。

2010年3月22日月曜日

「中小製造業」×「大学」×「BOP」

先日、東京大学の博士課程の学生が中心で企画をしたBOPシンポジウムに参加した。

ある学生が、我々enmono社の活動をTwitter経由で発見し、直接DMで招待をいただいたのが、きっかけだった。

シンポジウムの内容は「BOP」: Base Of the Pyramid=世界経済の外にいる貧困層40億人を、日本の技術、大学の叡智を用いてより豊かな生活をできるようにするべきだということが趣旨であった。

シンポジウムにはMITのD-labという、ハイテク&ローテクを使って、途上国の生活を改善させるプロジェクトからの参加もあり、世界のもっとも先駆的な事例を、英語プレゼンテーションでに聞く機会に恵まれた。

恥ずかしながら、このシンポジウムに参加するまでに、BOPという言葉さえ知らなかった。

そもそも、「技術」とは人間の生活をより豊かにするために存在するものであるのであるが、現在ではそれが経済的な価値として金銭的に儲かる、儲からないで判断され、儲かる技術は世界中に広まり、また、儲からない技術は企業や大学のなかに打ち捨てられている。

しかし、「技術」の本来の持つ意味からすれば、それがより良いものであれば、世界中に広めるべきであり、それにより人々の生活を豊かにするべきものである。

「技術というものを、どうしたら現在の経済システムの外にいる40億人に対して広く普及させ、人々の生活をどうやったら豊かに出来るのか?」というのが、わたしなりに理解した「BOP」の活動であった。

現在、BOPに対して様々な活動を行っているNPOやNGOまたは個人の殆どは、その活動の原資を企業からの寄付によっている。

しかしながら、BOPへの普及がビジネス的にきちんと回りさえすれば、世界経済のパイは40億人分だけ膨れ上り、貧困層の人々の生活は、これまでより、より安全に、健康に、そして豊かになるわけである。

仮に、BOPの人々にとって絶対必要不可欠な製品を開発し、一人から1円と同じ程度の売上を上げることができれば、40億円の売上につながる。

本シンポジウムで事例として上げられていたのは、人間には生きていく上で必要不可欠な「水」の清浄化に着目した、大阪の中小製造業の「日本ポリグル株式会社」である。同社、では、納豆に含まれているネバネバ成分に着目し、その成分を粉末化して水中の汚れを吸着化させる技術を開発した。

同社の小田会長は自らバングラデッシュに足を運び、現地の人の目の前で水を清浄化するデモンストレーションを行い、製品のPRをしてきた。

すばらしいのは同社はバングラディシュの女性の方々を組織し、「ポリグルレディ」として現地で販売する組織をつくりあげつつあることである。

本活動により、これまで現金収入のなかったバングラデッシュの地元の女性の雇用を作り出し、経済的な自立を促し、さらに、本製品を販売し、飲み水を濾過してもらうことで地元の方々が衛生的で、健康な生活できるようになるということである。

日本の水道水はどこでもそのまま飲めるレベルまで清浄であるので、本製品の拡販は難しいが、深刻な水の汚染が問題となっている貧困国でのニーズは非常に高い。

同社の事例は一例に過ぎない、その他多くの日本の技術が貧困国から貧困と劣悪な生活環境を取り除くことに貢献できると考えられる。固定費が少ない中小企業であるからこそ、最初からそれほど大きくないマーケットに対しても斬り込んでいくことができる。これこそ、日本の中小製造業の次に開拓すべきマーケットの一つであると考える。

シンポジュウムのあとで参加者の方々との交流会があり、その場で何人かの研究者と参加者に対していかのような意見を申し上げた。

『日本の中小製造業は、内部に様々な技術シードを持っているにもかかわらず、国内大手メーカーからの発注がほそり、多量の生産設備と人員があまっています。日本の中小製造業が持つ高い技術を、BOPの方々向けに活用することができれば、経済的にも大きな果実を得ることができる上に、世のため人の為に働くという製造業の方々の意識の向上も期待できます。また、モノづくりを通じて、世界のBOPのために貢献できる製造業に、今の若者の意識を向けることができるたので、跡継ぎがいない中小製造業の後継者問題も解決できると考えています。』と。

多くの研究者の反応は、非常に好意的であった。そして、様々なディスカッションをさせていただくことができた。

そのディスカッションの中で、研究者の方は、現在の日本の製造業および中小製造業がおかれた立場を、ほとんどご存知なかったということににショックを覚えた。

そこで、学術の世界のなかのBOPと、実際のモノをつくる世界の方々の意識をつなげる必要を強く感じた。

双方の世界のブリッジになり、BOPのために日本の中小製造業の力を活かしていただくために経営者を説得することは相当にハードルが高い。

しかし、我々はこれまでのような大企業からの注文をこなしてゆくモノづくりから、中小製造業自らが最終製品をつくり、BOP市場に使ってもらうことで利益を得られるようなエコノミクスを設計していかなければ、日本の中小製造業は滅んでしまうのではという非常な危機意識を持っている。

日本に残された時間は少ない、そのなかで、どこまでブリッジになることが出来るのか、とにかく、心の声にしたがって動くしかない。アクションを起こすと気が来たと感じた。

その後、研究者の方から直接メールをいただき、日本の中小製造業の技術を活用してBOPのために貢献するプロジェクトを起こせないかとご相談をいただいた。

即座に「YES」メールを返信した。

なにか分からないが、大きなうねりが起きていることを感じる、まさに日本の開国時に起きたウネリのようなものが。日本を想う心、世界を想う心、それがエコノミクスとして回り始めたとき、次世代の日本、「ニッポンVer. 3.0」が始動すると感じる。

2010年3月17日水曜日

スイス型モノづくりはこれからの日本のモノづくりのひとつのカタチ

本日、Twitter経由で知り合った、スイスの時計産業にくわしいライターの方と面談をした。

スイスの時計産業では、時計ベンチャーが、ボコボコと創業しているとのこと。

世界に中国製の安い製品が広まった反動なのだろう、富裕層はより高価なもの、価値のあるモノを求めるようになった。

有名な時計メーカの中で実力をつけた、「時計プロデューサー」たちが、独立し、そこにVCや銀行が資金を投下して、会社を立ち上げるという動きが起きているとのこと。

これこそ、まさに、当社の目指している、「マイクロモノづくり」である。

そのライターの方のご意見ではプロデューサーに必要な要素は、「プロデューサーに求められる要素は三つだけ。モノが分かっていること(「知っている」ではない)、最終需要家の姿をちゃんと見ていること、そしてセルフプロデュースが上手いこと。これだけかなと思います。」ということである。


それにあえて、1つの要素を付け加えるとすると、「リスクを自ら背負う意志」だと思う。


わたしが、以前取材した「ユビタマゴ」の事例でも、窮地に追いやられた中小製造業の社長、自らが金型代金を負担し、販路を開拓するリスクを負って世に出した「ユビタマゴ」という美顔器が、大成功を収めた。


そこには、リスクを自ら負って、そのモノづくりを成功させるという、「意志」と「腑」が必要だと考えている。

スイスの時計は、時計プロデューサーがおり、そこに資本を投資する投資家がおり、モノづくりを支える高い技術をもつサプライヤーおり、そして、最後にもっとも重要なその時計を購入するユーザーがいる。


スイス型モノづくりは日本のモノづくり産業の今後をのひとつのカタチに成り得るとおもう。大量生産、大量消費の道をあきらめ、少量生産、高付加価値少量消費の道を作る。まさにマイクロモノづくりの思想だ。

しかし、日本のモノづくりと違い、スイス型モノづくりには大きなアドバンテージがある。それはすでに「スイスの時計」というブランドができあがっており、有名時計プロデューサーが新しい会社を起こし、その製品をリリースする段階で、世界中の販売エージェントが集まってくることだ。


スイスの時計産業では、すでに時計ディーラーという販売ルートが世界中にあり、製品の品質とセンスが良ければ、そのルートに乗せるだけで製品が売れてゆくという構造がある。

これは、シリコンバレーのネットベンチャーが製品をリリースして、世界を席巻できるのに似ている、インターネットという販路がそこにあるので、単純にWEBを公開すれば良いということだ。

モノづくりを事業として回す時に、最も大変なところはその製品の販路をいかにつくるのかということに尽きると考えている。

全く新たなカテゴリーの製品をリリースするときに、その販路を切り開くパワーは並大抵なものではない、それは、その製品を開発するのと同等かそれ以上の労力を必要とする。

enmono社の大きな課題として、モノづくりにおいて、販路をいかにして効率的に開拓出来るのかということがある。

これは、スイス時計のブランディングが非常に参考になる。モノづくりの物語をいかにして組み立て、そのメッセージをどれだけわかりやすく世界に発信していくことができるのかという戦略性が非常に重要だ。戦略を考え、実行するのが当社のミッションのひとつになる。

いずれにせよ、本日は、非常に良い刺激を受けた、またスイスのモノづくり事情を、今回知り合ったライターの方を介して少しづつ紹介して行きたいと思う。